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限定承認とは?

相続は被相続人の死亡と同時にスタートしますが、相続人が相続することになる被相続人の遺産には、預貯金等のプラス財産だけでなく、被相続人が、生前、抱えていた借金等のマイナス財産も含めて承継すべきであるとの考えが、民法における原則ですが、もし仮に被相続人が莫大な借金を残していたらどうなるのか・・・?

相続がマイナス財産も含めて承継する以上、後に残された相続人が、今後、借金まみれの人生を送らなければならないといったケースも十分考えられることです。

そこで、民法では、相続人が思いもよらない不利益を被らないよう、被相続人の財産をすべて受け入れる単純承認のほかに〝限定承認〟と〝相続放棄〟という2つの選択肢を残しました。
相続は、死亡によって開始する。

【民法 第882条 相続開始の原因】
相続放棄の詳細については、相続放棄の手続きの仕方をご覧いただくとして、ここでは限定承認に関する最低限身に付けておきたい基礎知識についてまとめておきます。

さて、限定承認とは何か?

…ということになりますが、プラス・マイナス問わず全ての財産を受け入れる単純承認とは異なり、被相続人が残した財産を調査し、プラス財産からマイナス財産を差し引き、それでもなお、プラスの財産が残っているのであれば、その余り(プラス財産)の分だけ相続をし、逆に、プラス財産をはるかに上回るマイナス財産が存在する場合には、借金を背負うことになるため、相続人は相続をしないという制度です。

限定承認については、言葉で説明するよりも、具体例を示した方がイメージしやすいので、次の表をご覧下さい。
100万円 50万円 50万円 矢印 50万円相続する
財産
プラス財産
(預貯金など)
マイナス財産
(借金など)
プラス財産
が残った!

100万円 200万円 -100万円 矢印 相続はしない!
借金
プラス財産
(預貯金など)
マイナス財産
(借金など)
マイナス財産
が残った!




コレだけは押さえる!限定承認の常識と特徴

先に説明したように、被相続人の財産が余ったら、その余った分だけ相続するという限定承認は、一見合理的な制度にみえるため、誰もがこぞって選択しそうな気もしますが、実は、あまり利用されていないのが現状です。

これは、限定承認をするための手続きが、非常に煩雑で面倒であるということが大きな要因のひとつと考えられますが、次に挙げるようなルールがあるため、限定承認は選択しない!という相続人がいるのも事実のようです。

相続人が限定承認をする際は、注意しなければならない事項がいつくかあるので、その点について少しまとめておきましょう。
限定承認の注意事項(1)
限定承認をするためには、相続開始を知ったときから3ヶ月以内(熟慮期間)に、家庭裁判所に限定承認の申立てをしなければならない…
もし仮に、相続人が限定承認(放棄含む)をしないまま、この熟慮期間が経過した場合には、単純承認をしたことになります。

ただし、相続財産の調査に手間がかかり、とても3ヶ月以内には把握できないというような状況にあれば、家庭裁判所へ申出ることによって、期間の延長をしてもらうことは可能です。

※「相続開始を知ったときから…」とは、遺産の存在を知ったとき、あるいはすぐに知ることができるようになったときからであるとの判例があります。
限定承認の注意事項(2)
相続人が複数存在する場合(共同相続人という)には、相続人全員が限定承認を選択しなければならない…
つまり、相続人のうち、ひとりでも単純承認を選択した場合は、限定承認は選択できないということです。

ただし、相続人が相続放棄をした場合には、最初から相続人ではなかったことになるため、限定承認が可能となります。

※ 相続人が複数存在する場合の限定承認申立てにおける熟慮期間3ヶ月については、相続人の最後の1人が期間満了していない限り有効であるため、たとえ他の相続人の熟慮期間が既に経過していたとしても申立ては行えます。
限定承認の注意事項(3)
限定承認をする際には、「限定承認申述書」を作成し、被相続人の住所地(または相続が開始した場所)を管轄する家庭裁判所に申出なければならない…
限定承認では、申述書の他に相続財産目録の作成や相続財産管理人の選任、債権者への弁済など、非常に煩雑な事務処理(←これが相続人の大半が限定承認を選択しない大きな理由にもなっています)が課せられているため、弁護士や司法書士に依頼するのが一般的です。

※ 申立てに必要な書類(書式)は、裁判所HPでダウンロードできます。




忘れちゃならない!限定承認と税金の関係

限定承認を選択する際には、税金についても考慮しなければなりません。

具体的には、譲渡所得税ということになりますが、限定承認では、相続時に時価で被相続人から相続人に対して譲渡があったものとみなすため、相続人に税金が生じます。

限定承認では、たとえ現実に売却していなくとも、売却した場合と同じく譲渡所得税を納める必要があるため、くれぐれもご注意下さい。

ただし、本来、被相続人にかかるものなので、限定承認による譲渡所得税の支払いは、相続財産の限度で支払われることになり、相続人がもとから所有してる固有財産から納付する義務はありません。
次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があった場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があったものとみなす。

1.贈与(法人に対するものに限る。)又は相続限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)…

【所得税法 第59条 贈与等の場合の譲渡所得等の特例より一部抜粋】