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Q16:遺言書の有効期限

遺言の悩み
遺言書を作成するなら定期的に作り直さないと効力がなくなると友人に言われましたが、遺言書に有効期限などはありますか?
結論から言ってしまえば、遺言書に有効期限はありません!の一言で片付けてしまうこともできますが、実際は様々なケースが想定されるため、場合によっては、遺言書の効力を巡ってトラブルに発展することも考えられます。

そこで、遺言書の有効期限(効力)に関する知識をまとめておきましょう。

まず第一に、何年、何十年経とうが、法的な効力が失われない遺言書とは、民法で定められたルールに則って作成された書面(言い換えれば、民法のルールから外れた遺言書は無効!ただし、内容によっては一部有効になる場合もある…)でなければならないということを押えておいてください。

その大前提を踏まえた上で話を進めていきますが、先に遺言書に有効期限はないとお答えしましたが、実は例外があります。

それは、特別方式の遺言を作成した場合です。

特別方式遺言とは、死期が差し迫った状況(病気や船舶遭難など)にある者が残すことのできる遺言書のことで、自筆(秘密)証書や公正証書に求められる普通方式の遺言作成ルールに比べると要件が緩和されていますが、特別方式で作成された遺言書にも、もちろん法的効力はあります。

ところが、この特別方式で作成された遺言書には有効期限が設けられているのです。

その期間は遺言者が自筆証書などの普通方式で遺言を行う事ができるようになってから6ヵ月間生存した場合です。
第九百七十六条から前条までの規定によりした遺言は、遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から六箇月間生存するときは、その効力を生じない。

【民法 第983条:特別の方式による遺言の効力】
特別方式遺言の効力
そのため、特別方式の遺言に限っては、例外的に法的効力が失われる有効期限がある!ということになりますが、実際、この特別方式遺言が用いられるケースはほとんどありません。





遺言書が複数ある場合…

一度作成した遺言書(特別方式は除く)に有効期限はありませんが、遺言書の効力が無くなってしまうケースがあります。

その典型的な例が、遺言書を作成した本人が複数の遺言書を作成していた場合です。

民法のルールに従った遺言書には、必ず作成年月日を特定するための日付を記載しなければなりませんが、遺言能力がある者(15歳以上)なら誰でも何度でも遺言書を作ることができます。

つまり、毎年、新しい遺言書を作成するなんてことも可能なわけです。

しかし、そうなると問題になってくるのが、古い遺言書の存在(効力)です。

新たに書き直した遺言内容に、前回、書いた内容と異なる遺言があった場合、相続人の間で揉めてしまうことが考えられますが、その場合は最新の日付が記載されている遺言書が優先されるため、新しい遺言書が作成された時点で、古い遺言書の効力はなくなってしまいます(ただし、内容が重ならない(矛盾しない)場合は、古い遺言書であっても、その部分は有効!また、自筆証書と公正証書の遺言に優劣の差はないため、両方の方式によって作成された複数の遺言書が存在した場合も、日付の新しい書面が優先!)。
遺言書の優先順位

公証役場で遺言書を作成した場合…

公証人が筆記して作成する公正証書遺言の原本は公証役場で厳重に保管(遺言者側には原本と同じ効力がある正本が渡される)されることになりますが、実は永遠に保管されるわけではありません。

公証人法施行規則というものがあり、原本の保管期間は原則20年となっています。

公正証書遺言も、このルールに従うため、20年間は公証人役場での保管が義務付けられるわけですが、では、20年後の公正証書遺言はどう扱われるのか気になるところです。

一見、保管期間があるなら、20年が公正証書遺言の有効期限なのでは?と思ってしまう人もいるかもしれませんが、実際はそんなことはなく、遺言者本人が新たな遺言書を作成しない限りは効力のある遺言書として扱われます。
公証人は、書類及び帳簿を、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に掲げる期間保存しなければならない。ただし、履行につき確定期限のある債務又は存続期間の定めのある権利義務に関する法律行為につき作成した証書の原本については、その期限の到来又はその期間の満了の翌年から十年を経過したときは、この限りでない。

一 証書の原本、証書原簿、公証人の保存する私署証書及び定款、認証簿(第三号に掲げるものを除く。)、信託表示簿 二十年


【公証人法施行規則 第27条】
また、公証人法施行規則には、次のような規定があるため、公正証書遺言に関しては、実務上、遺言者が亡くなるまで保管している(つまり、20年以上保管するケースもある)というのが一般的です。
第一項の書類は、保存期間の満了した後でも特別の事由により保存の必要があるときは、その事由のある間保存しなければならない。

【公証人法施行規則 第27条3項】

遺留分を侵害する遺言書がある場合…

民放で定められた法定相続人には、必ず受け取ることのできる最低限度の相続分があり、これを〝遺留分〟と呼んでいます。

そのため、遺言書に遺留分を侵害するような内容が書かれていた場合は、侵害された者が遺留分減殺請求を行使することによって、遺言書にかかれている内容の一部の効力を失効させ、財産の返還を求めることができるようになっています。
遺留分減殺請求権の時効期間
しかし、遺留分減殺請求権には消滅時効があり、相続開始および減殺すべき贈与、または遺贈があったことを知ったときから1年以内に遺留分を侵害している相手方に請求しなければ、その権利はなくなってしまいます。


また、たとえ遺留分が侵害されていることを知らなくても、相続開始のときから10年経過してしまうと権利は消滅してしまうので、遺言書の有効期限という意味では少し的外れの知識となりますが、遺留分権利者にとっては知らなかったでは済まされない規定なので、忘れずに覚えておきたいところです。