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相続の悩み相談14
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Q25.遺産分割協議のやり直し

相続の悩み相談
遺産分割後、しばらくして、「私も相続人です」と名乗る女性が1人現れました。どうやら亡くなった父と不倫関係にあった女性との間に生まれた子のようですが、もし彼女が正式に相続人であると認められた場合、再度、遺産分割協議をやり直さなければならないのでしょうか?
婚姻関係にない男女間に生まれた子は、認知によって相続権が認められることになります。

したがって、あなた方相続人の前に現れた女性の話しが本当であり、彼女が認知の訴えを提起するなどして法的に親子関係が認められた場合には、その女性も相続人のひとりとして、亡くなった父(被相続人)の遺産をもらい受ける権利があると言えます。

※ 既に父親が亡くなっている場合には、死亡日から3年以内に認知の訴えを提起しなければ、請求はできなくなります。

ただし、民法第910条(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)には、次のような規定があります。
相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続入が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。

【民法 第910条】
したがって、遺産分割後に認知によって相続権を得た者は、他の共同相続人に対して、遺産分割協議のやり直しを請求することはできません。

その代わり、遺産総額に対する自分の取り分である相続分の価額を計算して、金銭的な支払いを受けることができます。

遺産評価の計算の基準となる時期については、① 相続開始時における評価、② 支払請求を行った時点における評価の2つが考えられますが、「現実に支払いをするとき、あるいはその時期にもっとも近い時期」であるとした判例があることから、後者(②)を評価基準として認知者の分与額を算出すればよいと思われます。

ちなみに、これまで違憲であるとの指摘も多かった、非嫡出子の法定相続分は嫡出子の1/2とするとした規定ですが、現在は法改正により、非嫡出子の相続分も嫡出子の相続分と同等になっています。




Q26.遺産分割後の相続放棄

相続の悩み相談
半年前に父が亡くなり、遺産分割も終え、ようやく落ち着いてきた頃、突然、金融業者の方が現れました。どうやら父は、私達に内緒で、生前、知人の借金の保証人になっていたらしいのです。遺産では賄えないほどの返済額なので相続放棄をしたいのですが、半年経った今、放棄はできるのでしょうか?
相続人は、被相続人(亡くなった人)の財産に属した一切の権利・義務を承継します。

※ 相続では被相続人の財産上の地位を受け継ぐのであって、身元保証などの一身専属権や祭祀財産は対象外です。

したがって、預貯金や不動産等のプラス財産に限らず、被相続人が生前抱えていた借金等のマイナス財産も受け継がなければならないため、プラス財産を上回るマイナス財産がある場合、相続人は予期せぬ負債を抱えてしまうことも十分考えら得ます。

そこで、民法では、この点を踏まえ、次の3つの選択肢を設けることで、相続人に思わぬ被害が及ばないよう対処しています。
単純承認 被相続人が残した財産(借金等のマイナス財産も含む)をすべて相続する。
限定承認 被相続人が残した財産のうち、マイナス財産よりもプラス財産が上回る場合には、その上回った範囲内で相続する。
相続放棄 被相続人が残した財産は、プラス・マイナス問わず一切承継しない。
ただし、相続人が限定承認や相続放棄をするためには、熟慮期間内(相続開始を知ったときから3ヶ月以内)に家庭裁判所へ申述しなければならず、この期間内に行わない相続人は単純承認したものとみなされてしまいます。

さて、あなたの場合、遺産分割を行っていることから、単純承認したものと思われますが、もしあなたの父親が借金の保証人になっていた場合には、法定相続分にしたがって各相続人が返済義務を追わなければなりません。

※ マイナス財産については債権者の同意なく、勝手に相続分の割合を変更することはできません。

思わぬ借金取りの出現により、受け継いだ遺産よりも借金の方が多いことが判明したことから、あなたは半年経った今になって相続放棄をしたいとのことですが、熟慮期間経過後の相続放棄を認めた次のような判例があります。
熟慮期間とは、原則、相続開始の原因たる事実、およびこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から起算すべきものであるが …… 相続人が相続財産の全部、または一部の存在を認識した時、または通常これを認識しうべき時から起算すべきと解する

【最判 昭和59.4.27】
したがって、相続開始後、半年経ってから初めて借金の存在を知ったような場合には、その借金の存在を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述ができると考えられます。

熟慮期間後の相続放棄が認められるためには、特殊な事情が必要になってくるため、一度、弁護士等の法律専門家に相談されるとよいでしょう。