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相続の悩み相談8
Top相続遺言遺留分Q&A

Q13.相続欠格とは

相続の悩み相談
兄が自分にとって不利になると思ったのか、父の遺言書を隠していることが、先日、発覚しました。遺言書の隠蔽は相続欠格に当たると聞いたことがありますが、この場合、兄を相続欠格者とすることができるのでしょうか?
民法第891条【相続人の欠格事由】には、次のような規定があります。
次に掲げる者は、相続人となることができない。

……(省略)……

 5.相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者。
ちなみに、隠匿とは人目に触れないよう隠してしまうことです。

したがって、共同相続人の内の1人が遺言書を隠していた場合には、民法で規定した〝相続欠格〟事由に該当するため、相続権が剥奪されることになります。

しかし、あなたのお兄さんが遺言書を隠していたからと言って、直ちに相続欠格者になるとは限りません。

というのは、相続人の隠匿行為が、自己の利益のため、あるいは不利益を逃れようとする意図から、積極的に行われたものである場合に限って、相続人としての資格を失わせるという判断を下した最高裁の判例があるからです。
相続人が遺言書を破棄、又は隠匿した場合、相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、遺言に関する著しく不当な干渉行為があったとはいえず、民法891条5号にある相続欠格者の趣旨には該当しない。

【最高裁 平成9.1.28】
よって、もし仮に、あなたのお兄さんが、不当な利益を得ようとか、あるいは不利益を逃れようという動機や目的によって、故意に隠そうとしていた経緯や意思が特に見当たらない場合には、相続欠格者には当たらないかもしれません。

遺言書の隠蔽行為をめぐっては、過去に「隠したことにはならない」といった事例も少なくないので、慎重に検討する必要があるでしょう。



Q14.相続排除とは

相続の悩み相談
長男は高校卒業後、いまだ定職にも就かず、私や妻に小遣いをせびっては、パチンコや競馬といったギャンブルに明け暮れています。そこで、私としては、長男を懲らしめる意味でも、相続人から排除し、親思いの次男に全財産を譲りたいと思っています。長男を相続人から排除することは可能でしょうか?
民法で規定された相続人排除制度は、家庭裁判所の審判(あるいは調停)が必要になってきます。

したがって、あなた(被相続人)の意思ひとつで、相続人の相続資格を自由に排除することができるわけではないので、遺言によって「全財産を次男に譲る」と指定したとしても、相続人である長男には、法律によって最低限相続できる遺留分(被相続人の財産の1/2)が残されていることになります。

相続排除とは、そんな遺留分すら相続することの出来ない制度ですが、家庭裁判所に相続排除を認めさせるためには、排除される者に排除事由がなければなりません。

この排除事由について、民法では次のような規定があります。
遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

【民法第892条 推定相続人の排除】
このように非常に抽象的な概念であって、具体的にどのような行為が排除事由にあたるかどうかは判断の難しいところです。

また、過去の判例においても、相続排除を肯定した例と否定した例があるため、個々のケースによって判断が分かれるところですが、次の例からすると、お金を渡さないと長男が毎回暴力を振るうとかいった行為があれあ事情は変わって来ますが、単に定職に就かずギャンブルに明け暮れているといった程度の理由では、相続排除が認められるようなことはないと思われます。
相続排除を認めた例

大学入学後、賭け事、女遊び、バー通いといった遊びに高じ、学業がおろそかになり中退後、就職しても中続きせず、親から生活費等の仕送りを受けても、就職や結婚を口実に無心を繰り返し、これに応じない場合には、乱暴をするなどの行為は、「親泣かせ」の著しい非行にあたるとした例

【大阪家審 昭和37.8.31】


少女期に多数の非行歴があり、18歳に達した後も暴力団と同棲し、その後他の暴力団幹部と結婚したが、父母はその婚姻に反対であったにもかかわらず、父名義で披露宴の招待状を知人らに送付するなどの一連の行為は、父親に対する重大な侮辱であると認めた例

【東京高決 平成4.12.11】
相続排除を認めなかった例

親に対する暴言・暴力があったが、それは幼少期に里子に出されたり、結婚等に反対されたり、妹に偏愛し家屋等を贈与するなどして、子に疎外感を抱かせるような行為を行った親にも原因があるとして相続排除を認めなかった例

【大阪高決 昭和37.3.13】


同居していた被相続人夫婦と長男夫婦の関係が、姑嫁の不和をきっかけに悪化し、互いに悪口や嫌がらせが始まり、嫁が姑を突いたりする暴力も生じたが、これらの行為は、日常生活上で起こる感情的な対立であり、夫婦双方に責任があるとして、父の長男に対する排除請求を認めなかった例

【東京高決 平成8.9.2】