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民法:相続編1

民法:相続の基礎知識(1)entrance

知らなかったでは済まされない!相続法

財産を残す者(被相続人)、あるいは、被相続人が残した財産を承継する者(相続人)・・・

立場は違えど、人として、この世に生を受けた以上、誰もがいつかは必ず相続問題に直面します。

しかし、不労所得(働くことなくタダで手に入る所得)としての性格を持つ遺産は、時として、仲の良かった家族をも崩壊させるトラブルへ発展してしまうケースが少なくありません。

「お金は人を変える…」「相続 = 争族」とはよく言ったものですが、良くも悪くも、相続とは、それだけ深刻な問題を抱えた誰もが避けて通ることの出来ない人生の一大イベントに当たるため相続≠争族≠ニしないためにも、国民一人一人が相続に関心を持ち、最低限の知識を身に付けておかなければなりません。

知らなかったでは済まされない知識・・・

それが相続法です。

相続法については、民法第5編相続【第882〜1044条】に収められていますが、相続人の間で紛争が生じた場合には、ここで定められたルールが基準となり適用されることになります。

また、被相続人(亡くなった人)が残す遺言については、民法・相続編のルールに則った形で作成しなければ法律的な効力は発生しないため、相続トラブルのもとにもなりかねません。

民法で定めたこの相続法は、大きく相続遺言遺留分≠ニいう3つの分野に分けて整理することができるので、相続トラブルを回避するために、コレだけは身に付けておきたい最低限の知識について、各分野ごとにまとめておきます。
民法 相続:第5編

総則 第882〜885条
相続 相続人(第886〜895条)
相続の効力(第896〜914条)
相続の承認及び放棄(第915〜940条)
財産の分離(第941〜950条)
相続人の不存在(第951〜959条)
第886〜959条
遺言 第960〜1027条
遺留分 第1028〜1044条


コレだけは押さえる!民法【相続】の常識

この章では、いったい誰が相続人になるかという、相続における最も基本かつ重要な点にスポットをあて、その相続人の順位と範囲について規定しています。

【第886〜895条】矢印相続人
【第896〜914条】矢印相続の効力
【第915〜940条】矢印相続の承認及び放棄
【第941〜950条】矢印財産の分離
【第951〜959条】矢印相続人の不存在

相続人
法定相続人の優先順位【887〜890条】

順位 法定相続人
第1位 ※ 原則として胎児、養子、非嫡出子を含む 配偶者は、常に相続人となる
第2位 父母
第3位 兄弟姉妹

相続欠格【891条】
相続欠格とは、民法で定められた一定の理由により、相続人としての資格が認められない相続人のことを指しています。

相続欠格事由(被相続人を殺害するなど)に該当する者は、本来、得るべきはずであったその相続権を取り上げられてしまうため、相続欠格者の子や孫が、その者に代わって代襲相続することになります。

なお、たとえ相続される人(被相続人)が、遺言で相続欠格者に相続させると書き残しても、法律上は認められないので、相続欠格に該当する相続人の相続権は剥奪されてしまいます。
相続排除【892〜894条】
相続人廃除とは、被相続人(亡くなった人)の意思により、推定相続人の持っている相続権(遺留分を含む)を剥奪する制度です。

ただし、被相続人がなんでもかんでも好き勝手に相続排除することができるわけではありません。

法律に定められた排除理由に該当し、推定相続人を廃除することが相当であると家庭裁判所が認めた場合に限って、推定相続人の相続権が失われることになります。

なお、相続排除が相応しいとして認められる理由については、民法第892条に規定されていますが、排除理由を整理すると下記のようになります。

(イ) 遺留分を有する推定相続人の被相続人に対する虐待や重大な侮辱

(ロ) その他、推定相続人自身において著しい非行(犯罪を犯した等)があったとき

相続の効力
相続人は、被相続人の財産に属する一切の権利・義務を承継します。

※ ただし、一身専属権(被相続人自身でなければ目的が果たせない権利のこと。例:運転免許証、扶養請求権、生活保護受給権…など)は承継しません。
法定相続分【900条】
被相続人が残した財産については、遺言がない限り、相続人が協議することによって自由に分割することが出来ますが、相続人間で紛争が起きた場合には、民法によって各相続人が承継する財産の割合が決められています。

相続人 法定相続分
配偶者

配偶者【1/2】子【1/2】
※ 配偶者が既に死亡している場合には、子が全て相続する
配偶者

父母
配偶者【2/3】父母【1/3】
※ 配偶者が既に死亡している場合には、父母が全て相続する
配偶者

兄弟姉妹
配偶者【3/4】兄弟姉妹【1/4】
※ 配偶者が既に死亡している場合には、兄弟姉妹が全て相続する

代襲相続【901条】
本来、相続人となるべき相続者が、相続開始前に既に死亡していたり、相続欠格・相続排除によって相続権を失った場合には、その相続人の子供達が被相続人の財産を相続します。

代襲相続の詳細については、代襲相続の常識をご覧下さい。
相続の承認及び放棄
相続は被相続人の死亡と同時に開始しますが、先の【相続の効力】でも述べたように、相続人は被相続人が残したすべての財産を承継します。

よって、プラス財産よりもマイナス財産の方が多い場合には、相続人が借金返済をすることになります。

そこで、相続人に当たる者は、相続開始を知ってから3ヶ月以内に、下記に示す3つの中からひとつを選択し、相続をするかしないかを決めなければなりません。

単純承認 被相続人が残した財産(借金等のマイナス財産も含む)をすべて相続します。
限定承認 プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか分からない場合等に利用される制度です。被相続人が残した財産のうち、マイナス財産よりもプラス財産が上回る場合には、その上回った範囲内で相続します。ただし、相続開始を知ったときから3ヶ月以内に、相続人全員で手続きを行う必要があり、手続き自体も煩雑なため、よほど多額な財産が残る見込みがなければ、相続放棄を選択する相続人が多いと言えます。

相続放棄 被相続人が残した財産は、プラス・マイナス問わず一切承継しません。相続開始を知ったときから3ヶ月以内に手続きが必要ですが、限定承認とは異なり単独での申立てが可能です。

財産の分離
この章は被相続人の債権者であった者や、相続人の債権者を保護するために設けられたルールです。

被相続人が死亡したことによって、遺産は相続人が承継しますが、相続が始まると相続人の財産は、相続開始前から所有していた固有財産と、相続によって引き継いだ財産がごっちゃになってしまい、被相続人の債権者であった者や相続人の債権者は、返済を受ける際、困ってしまう恐れがあります。

そこで、債権者が家庭裁判所に申し出ることによって、遺産と相続人固有の財産を明確に区分してもらい、債権回収が行えるようになっています。

しかし、この制度は、実務上、あまり利用されていないようです。
相続人の不存在
被相続人が莫大な財産を所有していながら遺言を残さず、かつ法定相続人もいないような場合には、遺産をどう処理したらよいか困ってしまうことになります。

そこで、民法では相続人不存在時における、一定のルールを設けています。
特別縁故者への分与【958条の3】
配偶者をはじめ、子、父母、兄弟姉妹、甥・姪がまったく存在しない場合には、特別縁故者が家庭裁判所に申し出る(←相続人を探すための広告終了後、3ヶ月以内)ことによって、被相続人が残した遺産の一部(あるいは全部)を受取ることが出来ます。

※ 特別縁故者とは、通常、内縁の妻や事実上の養子、被相続人の療養看護(看護士などは含まれない)に努めた者などが該当するとされています。
国有財産【959条】
特別縁故者も存在しない場合、被相続人の財産は国有財産として扱われます。